「クラウドが変える情報社会」は、ネットワーク経由で様々なソフトウェアや情報システムを利用する「クラウドコンピューティング」など最新の情報通信技術の課題や展望について議論した。

「クラウドが変える情報社会」は、ネットワーク経由で様々なソフトウェアや情報システムを利用する「クラウドコンピューティング」など最新の情報通信技術の課題や展望について議論した。
高度なICTインフラが整備できれば、世界中の情報が共有できる。例えば家庭や職場、医療機関、自治体、業種等の枠を超えて連携すれば、高度なサービスを実現できる。
NECは情報技術と通信網を融合した共通プラットフォームの提供や、コストを従来より2割削減するクラウドの基幹システムを提供していく。情報をやり取りする端末やセンサー技術はクラウド事業の強力な武器になると見ており、RFのICタグや指紋認証などの開発に力を入れている。
環境対応も進める。データセンター向けに従来比で最大70%省電力化したサーバー「エコセンター」を開発したほか、次世代送電網(スマートグリッド)やインテリジェント交通周囲ステムの導入で、2017年度までに1500万トンの二酸化炭素削減を目指す。
ICTの利活用を進めるには、教育や医療、行政など公的分野のサービスの高度化が欠かせない。教育分野では、デジタル教科書やコンテンツを充実させ、学校だけでなく家庭でも利用できるようにする必要がある。生徒が理解できなかった内容は繰り返し見たり、質問したりできる。
NTTラーニングシステムズは、語学教育のアルクと提携し、7月から「バーチャル英会話教室」を開設する。インターネット上の3次元仮想空間で、アバターを使って実践的な英会話が学べる。教材もネットで提供し、SNSで質問や交流ができる。
医療分野では、病院間で電子カルテ等の情報を共有化すれば急患も迅速に対応できる。行政分野では料金割引などのインセンティブの充実が求められる。
利用率が低いからと言って「事業仕訳け」するのではなく、使いやすくすることが重要だ。中途半端なシステムが一番コストがかかり、使い勝手も悪い。やるなら徹底してやるべきだ。端末やコンテンツを含めてトータルで使いやすくしなければならない。
ツイッターには「4つの原則」がある。1つ目がタイムリーに情報を伝える「即時性」。我々は利用者が「いま、何をしているか」を他の利用者にすぐ伝える目的でツイッターを作った。今や毎秒2000件の投稿があり、毎秒120万件の利用者が閲覧するシステムになった。
次が何でも受け入れる「開放性」だ。我々以外が作ったツイッターに関連するアプリケーションの数は現在16万件に及ぶ。おかげでわれわれ自身では手が回らないニーズに応えられる。例えば。米アップルのスマートフォン「iPhone」をはじめ、さまざまな携帯電話で使える。これは、3番目の原則「ユビキタス」の強化につながる。
4番目の原則はユーザーの「興味の維持」。求める情報を探しやすく、合うパムなど不要な情報は見せないでも済むよう様々な改良を加えてきた。
ツイッターはハドソン川に飛行機が不時着した情報をタイムリーに伝えた。イランの選挙から、アフリカに井戸を造る慈善運動、企業と顧客の仲介まで、すべてを受け入れ、ユーザーが興味を持つ情報を世界中から投稿している。4つの原則によりツイッターはポジティブな影響を世界に与えていると思う。
グーグルは次世代送電網(スマートグリッド)や太陽光、風力などの再生可能エネルギーの利用を積極的に推進している。クラウドは低簾かつ安定的な電力供給を必要とするからだ。電力網と情報網を束ねるスマートグリッドはモノとモノをつなぐあらたなインターネットとなる。インターネットが始まった頃に、現在のような使われ方は誰も想像できなかった。いま考えられている以上の新たな応用を生み出すのは間違いない。
導入は新興国が有利
スマートグリッドは、深化が激しいインターネット技術と、構築済みで信頼性が重視される電力の制御系システムを融合させる難しさがある。電力システムをこれから整備する新興国の方が最先端の技術を一挙に導入しやすい。
世論の盛り上がり必要
セキュリティやプライバシーも課題だ。各家庭の電力計を次世代電力計(スマートメーター)に置き換え、家庭内の電力消費を「見える化」するまでは反対はないだろう。だが、他人が自宅のエアコンの温度を変えるのを許すかは国民的な合意がある。政府がしっかり制度設計できるような世論の盛り上がりが必要だ。
スマートグリッドは、進化が激しいインターネットの技術と、構築済みで信頼性が重視される電力の制御系システムを融合する難しさがある。新興国の方が最先端の技術を一挙に導入しやすい。
新たな技術を普及させるときに、「消費者が王様」という原則を忘れるべきでない。米国では先進的な個人が先に動き、有用性を実証した後にインフラ化が進んでいくことが多い。
日本の技術は世界で尊敬されている。ただ、もっと消費者の声を聞き、消費者を開発に巻き込むべきだ。スウェーデンと日本はよく似た構造を持つが、その点は異なる。
スマートグリッドの普及に向けての課題はいくつもある。大事なのは段階を踏みながら解決策を考えること。制度設計では原理原則を求めて、具体的な個別の技術は決め過ぎない方がよい。
最先端のコンピューターの使い方だけでなく、社会インフラまでも大きく変えていく原動力になることだ。特に重要となるのがスマートグリッドなど電力消費を抑えるエコシステムをどのように構築するかだ。コンピューターはア「ムーアの法則」により能力が1年半で倍増し、通信も「ギルダーの法則」により速度が急速に増す。だが電力供給だけは飛躍的な供給の拡大が望めないからだ。
そうしたICTによる新しい国づくりに熱心なのが、アイルランドだ。光通信や次世代送電網、電気自動車など環境に優しい技術を融合していくことが重要だ。
クラウドは活版印刷を発明したグーテンベルグ以来の出版の世界も変えつつある。米アップルの新しい情報端末「iPad」が示すように、音楽や映像に加え、書籍までもネットから簡単に取り出せるようになった。もはやソフトやコンテンツは購入するより、必要なときに必要な分だけ利用する時代。グーグルに対抗し、出版物の電子化を進める国立国会図書館は「クラウド時代には著作権法など制度の抜本的な見直しが必要だ」という。
しかし新技術の登場は利便性をもたらす一方で、安全性やプライバシーを損なう危険性もはらんでいる。インターネットが登場したときにも指摘されたことだが、ネットからクラウドへと技術が進化する今も、改めて安全対策に取り組む必要がある。