5兆円 スマホ市場争奪 納入の成否、成長左右

スマートフォン(高機携帯電話=スマホ)やエコカーなどの普及で、電子部品が新たな成長期を迎えた。求められるのは従来より小型大容量で省エネ性能の高い部品。
米アップルなどの新製品に部品が採用された企業の業績は急伸する一方、技術革新の波に乗り遅れれば苦境に立たされるケースもある。優勝劣敗が鮮明になってきた。
多額の投資覚悟
 中堅電子部品メーカーの第一精工。松江市で小型コネクターの新工場を今年1月に稼働させた。アップルのスマホ「IPhone」やタブレット端末「IPad」向けとみられる受注が決まり、工場の規模を途中で2倍近くに拡張した。年間売高の4分の1以上に相
当する総額1OO億円を投じて順次、能力を高める計画だ。
 同社は基板と液晶パネルなどをつなぐ微細なコネクターに強い。端子の間隔はわずか0.25ミリメートル。旧世代の端子より約2割短く、機器の小型化に一役買っている。
 アップルが直近1年間に販売した「IPhone4」は約7000万台。米IHSアイサプライによると、1台当たりの部品コストは187ドル(メモリー搭裁量16ギガバイトの最下位機)。単純計算で約130億ドル(約1兆円)以上の電子部品市場を創出したことになる。その購買力は絶大だ。
 アップルは電子部品メーカーに技術だけでなく、高い供給能力を求める。「日本の完成品メーカーのように露骨に値切らないが、量と納期には極めて厳しい。時に身の丈を超えた大型投資も覚悟しなくてはならない」(電子部品メーカー幹部)
 厳しい条件をクリアしたメーカーの部品だけが、活躍の場を与えられる。電気を蓄える「積層セラミックコンデンサー」 (MLCC)に目をつけたのもアップルだ。
 最先端のMLCCは縦0.4ミリ、横0.2ミリO・2とごま粒以下。小さすぎて基板上への実装が難しく、多くのメーカーが電子製品への採用に及び腰だった。アップルが2010年に発売したIPhone4に搭載してから、採用する企業が一気に増えた。
 この恩恵を受けたのがMLCCで35%の世界シェアを持つ村田製作所だ。だ。11年3月期の営業利益は2.9倍の774億円。アップル向けの取引は、売上高(10年度実績6179億円)の15%弱を占めるとみられる。
M&Aも活発化
 スマホの普及で役割を終える部品もある。折り畳み式の携帯電話で必須だったちょうつがいはその一例だ。ヒンジ部品大手でジヤスダック上場のストロベリーコーポレーションは11年3月期に3億7100万円の債務超過となった。10月末に上場廃止となる見通しだ。
 スマホの機能の進化を先読みし、「キーデバイス」を受注するにはM&λ(合併・買収)の活用も重要になる。
電波から必要な信号だけを取り出す主要部品「SAWフィルター」。TDKは同フィルターを手がけていた独エプコスを08年に2000億円で買収した。今やTDKの世界シェアは3割超で、同約4割の村田製作所としのぎを削る。
 その村田製作所は今年7月、ルネサスエレクトロニクスの電波信号処理の部品事業を、10月にはセンサーに強いフィンランドのVTIテクノロジーを買収すると発表した。
  「(主力部品から)にじみ出す」 (村田恒夫社長)ように、スマホ基板上での陣地をじわじわと拡大する戦略だ。
勝ち祖企業にも安住の地はない。中国などの大手通信機器メーカーは、新興国向けに販売価格が100ドル(約7700円)'程度のスマホを開発中という。「100ドルスマホ」が登場すれば、部品への値下げ圧力が一段と強まるのは確実だ。
 アジア企業の追い上げも急だ。モルガン・スタンレーMUFG証券の調査によると、セラミックコンデンサーの11年3月期の世界シェアで韓国サムスングループのサムスン電機が、太陽誘電とTDKを抜き去り、2位に浮上した。MLCC「O402」の製品化ではTDKに先行するなど、技術力も十分だ。
 IPhoneの世界シェアから推計するとスマホの部品市場は約5兆円。部品メーカーが勝ち残るには「機能・量・納期」を満たすだけでは十分でない。コストを下げ続けてシェアを維持できる持久力も問われている。