変革期を迎えた日本経済 グローバル・IT経営が不可欠―Ⅱ

活用化の源泉は異質の受け入れにある 
                    ソフトブレーン創業者 マネジメント・アドバイザー 宋文州氏
 成長に異質な人材不可欠
異質という言葉は、決して良い意味では使われていない。褒め言葉ではなく喜ぶ人は少ないと思う。誰も異質な人間にはなりたくないのが現実であり、国や企業も同様である。
 しかし、日本経済や企業を活性化するためには、あえて異質を受け入れることが必要だ。異質を受け入れる勇気や寛容性がない国や企業は、成長性の欠如が必至である。
 ある哲学者の言葉に「世の中で美しい物は何か。それは相反し矛盾する2つの要素が1つに融合した時が最も美しい」とあるように、異質を受け入れることの重要性は従来から指摘されてきた。
 私はソフトブレーンを創業してから引退するまで、十数年間にわたり経営者としてビジネスに取り組んできた。顧客の方々も、日本を代表するような大手企業が中心であった。その過程で実感したことは、大手企業の中にも元気のない企業があることだ。
それら企業の共通点は、異質な人材が少ないことである。相手が何を考えているかは、言わなくても分かるものである。社長が選ぶ次の社長は、性格的にも前任者に似ているタイプの人が多く、同質の経営者が多いように思う。社員も同様で自分の意見を率直に訴える人が少ない。会社や上司・先輩を意識した発言が多く、個性的な人材が少ない。異質な社員が少ないから、異質を怖がっているようにも見える。
企業のコンプライアンスに関連する不祥事などを見ると、背景には同質企業、同質経営者による弊害も原因の一つと考えられる。先輩を裏切ることをしないことは、美徳であるように思われるが新しいものは生まれない。
 儒教の考え方にはプラス面もマイナス面もあると思うが、権力者側が既得権益を守るために使っている場合もある。理論が長く伝わる理由は、人々の心をとらえたからだけではない。同質性を保持し、当事者、権力者、地位の高い入閣の利益を守ることだけに執着すれば、造反も生まれず、新たな価値を剔出することはできない。
 人間は異質なものを受け入れ、刺激を受けなければ成長しない。企業も同様に、許容範囲の中で組織が壊れないことを前提に異質を受け入れたほうが、一時的に拒否反応があっても新たな進化を遂げることになると思う。

超高齢・情報化社会での国際IT経営の課題と戦略
                            早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 小尾敏夫氏
  情報社会と超高齢社会が融合
  CIOの責任はより広範囲に
人類の歴史の中で情報社会はここ数十年、超高齢社会も十年である。他の国は高齢社会だが、世界の中で日本だけが超高齢社会に到達している。人類史上初めて、情報社会と超高齢社会が融合する、いまだかつて経験したことのない社会に日本は突入した。スマート・デジタル社会へのパラダイムシフトが求められる。
 世界人□は増加の一途をたどるが、日本は唯一人口減少、超高齢社会を迎えている。こうした中で日本の1人あたりのGDP、国際競争力も低下している。これらはともにかつては世界トップランクだったが、今は2ケタ台である。
 国際競争力低下の要因は、超円高、世界有数の災害大国、高コスト社会、自由貿易体制への遅れ、膨大な政府財政赤字、少子高齢化、政治の劣化、強い労働規制、環境規制、高い法人税などの様々な問題が折り重なり、国際競争力はなかなか上がらない。'
 政治はリーダーシップを持ち、国家ビジョンを国民に提示して官民挙げて再構築する時期だ。日本のシルバービジネス1OO兆円が、人ロ100億人時代に数予兆円になる可能性に期待がかかる。
 国際競争力強化には、次の3点が重要である。―点目は人材活用だ。「人材」ではなく「人財」が必要だ。明治時代以来、無資源国日本が世界に誇れるのは人財と教育である。特に日本の人財活用には、力を生かしきれていない女性、外国人、高齢者の能力を最大限に活用するのが急務。加えて戦力になるロボットは日本が世界に誇る最先端技術である。この4分野の能力を総合的に発揮することが日本再生の鍵となるが、規制緩和や未来への戦略思考が要求されよう。
 2点目はグローバル化だ。日本は世界一流の技術がありながら、国際標準を獲得し、世界市場にそれを売り込む人材が不足している。グローバル競争の中で国際人材の育成が喫緊の課題であり、産官学が総力を挙げて取り組むことが不可欠だ。
 3点目は経済再生の鍵を握るのが、戦略的な情報化投資である。日本の潜在経済成長力年率2%超の実質成長を達成するためには、中長期的な重点投資分野を見極め、経営戦略に効率的なIT投資を実施することが必要不可欠である。
 IT経営では業務プロセスの再構築にITを活用し、顧客満足度の向上を図ることが重要だ。日本企業のIT化は進んでいるが、様々な課題が残っている。つまり、多様化、差別化で情報の収集分析力や、商品開発力、顧客満足度が低下し、事務処理の増大で運営が非効率化している。
外部コンサルタントの活用も十分とは言えない。クラウドに対応した企業システムを構築していくことも重要だ。中小企業におけるIT人材やイノベーションの不足も課題だ。
 超高齢社会と情報社会の融合ではITの役割が非常に大きくなる。さらに国際IT経営において、ITビジネス戦略の要は最高情報責任者(CIO)であり、その職責はIT投資マネジメント、セキュリティー、知的財産、防災危機管理まで包含する。CIOは国際IT経営の成否を左右する存在である。

2012.02.15