ソニー「想定外」の連鎖 前期、大幅下方修正 米事業悪化響く

ソニーは10日、税金費用の追加計上などで、2012年3月期に過去最大となる5201億円の連結最終赤字になる見通しだと発表した。4期連続の最終赤字で、累計の赤字額は9193億円。デジタル家電の変革スピードについていけず、主力の薄型テレビ事業は8期連続の営業赤字。ソニーが「想定外の8年」から抜け出すには、過去にとらわれない非連続の構造改革に踏み込む必要がある。
 最終赤字(米国会計基準)は2月時点の予想(2200億円)から3000億円悪化する。主因は米国事業での繰り延べ税金資産の取り崩しだ。同税金資産は将来の税負担軽減を先取りした際に計上する資産。足元でテレビを中心に米国事業の収益が悪化。税負担軽減の前提となる将来の利益見通しも厳しくなり、取り崩しを迫られた。
 ソニーは前の期も国内事業で3600億円を取り崩しており、エレクトロニクス事業の収益環境が世界規模で想定より悪化したことを示す。
 加藤優・最高財務責任者(CFO)は税金資産の取り崩しについて「現金支出を伴わず、営業損益やキャッシュフローに影響はない」と強調した。ただ、昨年末に17%だったた自己資本比率は低下が避けられず、格付投資情報センター(R&I)は10日、ソニーの発行体格付け(シングルAプラス)を格下げ方向で見直すと発表した。
買収した映画会社の営集権を一括償却した1995年3月期の2933億円を上回る過去最大の赤字を計上することについて加藤CFOは「大変重く受け止める。聖域なき改革で収益改善へ様々な施策を打つ」と表明。
「また、いち早く13年3月期について約1800億円の営業黒字を見込むと発表し、最終損益も「赤字解消を図る」とした。
 増資については「選択肢の1つとして検討するが、現時点で具体的なものはない」と話した。
  10日にはシャープも前期の最終赤字が3800億円になると業績を下方修正。パナソニックを含めた家電3社の赤字は合計1兆6800倍円になる。3社はそろって今春にトップが交代。テレビの構造改革を中心に集績立て直しを図るが、韓国勢との競争などで今後の収益環境も不透明だ。

ネット変革描けど後手に
「良い赤字」と言えば語弊があるかもしれないが、後になって「あれが反転攻勢ののろしたった」と思える赤字がある。
 例えば日産自動車が2000年3月期に計上した約6844億円の連結最終赤字。日産は約2300億円のリストラ費用をかけて固定費を引き下げ「ゴーン改革」の起点とした。ソニーにとって過去最大となる今回の赤字は「反撃ののろし」になるだろうか。
 ソニーが赤字続きの泥沼から抜け出せないのは、インターネットがもたらす事業環境の変化が常に同社の想定を上回ってきたからだ。
 ソニーがネットの力を軽く見たと言うのではない。
 「1年半で性能が2倍になる半導体を積んだデジタル製品と、9ヵ月で帯域幅が倍増するブロードバンド(高速大容量通信)が家庭で普通に使われるようになる。デジタル・エクスプロージョン(爆発)だ」
  03年5月、まだ米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ) 「IPhone(アイフォーン)」も多機能携帯端末「IPad(アイパッド)」もなかった時代に、出井伸之会長(当時)は日本経済新聞のインタビューでこう語っている。日本の電機業界で、ネットがもたらす未来を最も正確に見通していたのがソニーだった。
だが「いつか来る」とわかっていても、来る前に備えるのは容易でない。まして「見通せている」という自信があればなおさらだ。
 最初のつまずきは03年1~3月期に巨額損失を計上して相場全体を混乱させた03年4月のいわゆる「ソニーショック」だ。
 パソコンなどの販売が急速に鈍化。在庫圧縮と生産縮小に動いた結果、エレクトロニクス部門で大幅な営業赤字を計上した。 当時の幹部が「少しブレーキをかけすぎた」と
打ち明けたほど、先手を打ったつもりだったが、「デジタルデフレ」はそこから加速。薄型テレビではついに下落率が「年率3割」に達した。ソニーも手をこまねいていたわけではない。世界最強のコスト競争力を持つ韓国サムスン電子と液晶パネルの合弁会社をつくったが、価格下落はその想定も上回った。
 もう一つソニーにとって想定外だったのはネットの進化スピードだ。
 デジタルカメラ、ビデオカメラ、カーナビゲーション、そしてテレビ。これまでソニーが手掛けてきた何種類ものデジタル機器の機能が、今やスマホの中にすっぽり収まった。単機能機器の単品売りでは太刀打ちできない。
 前期も震災やタイの洪水といヽった「想定外」は確かにあった。だが「想定外」の環境変化に、ずるずると防衛ラインを下げるような対症療法を続けていても、状況は好転しない。「創業的出直し」が復活の第一歩となる。

2012.04.12