中国事業 人件費重く 日系企業 日経調査

 日本経済新聞社が2日まとめた「中国進出日本企業アンケート」で、人件費上昇が中国事業の収益を圧迫している状況が鮮明になった。2011年度に、前年度比2ケタ賃上げした企業は8割に上り、中国事業の利益見込みが10%以上減る企業は2割近くに達した。人民元高もあり輸出拠点としての魅力は低下。ただ、巨大市場がグローバル戦略の要との位置付けは変わらない。人材登用などで現地化を進め市場開拓を急ぐ日本企業の姿が浮かぶ。
  中国では1年あまり続く金融引き締めが効き、経済の減速が鮮明になるなか、H年度の利益見込みが10%以上減ると回答した企業は有効回答の19%に達した。前回調査では10年度が10%以上減益見込みと回答した企業は4%にとどまっていた。一方、11年度利益が10%以上増えるとの企業も依然3割に上るものの、前回調査の5割強から減少、勢いに陰りが見える。
震災「影響ない」
 最大の要因は人件費上昇。前回調査も含め賃上げの動きを見ると、前年度比2ケタの賃上げとなった企業は10年度(前回調査)が51%、H年度に77%と拡大。12年度の見込みも66%で、人件費上昇が利益を圧迫する構図が続く。中国政府が昨年義務付けた中国で働く外国人を対象とした社会保険加入も重荷だ。
 回答企業の59%が人件費上昇を中国の事業リスクとしてとらえており、2番目の中国の成長減速(35%)を大きく上回る。
 東日本大震災も中国事業に影を落とした。日本からの素材・部品や完成品調達が滞ったことで、52%の企業が中国での事業展開に支障を来したという。「日本国内での調達先の多様化」 (29社)や「中国での現地調達を増やした」(27社)など、部材のサプライチェーン(供給網)の見直しで、今後の天災リスクに備える動きも目立った。
 震災後、日本の製造業の海外移転が加速、空洞化懸念が一段と強まったが、今回の調査では「中国シフトと撫災は直接の関係はない」が8割以上を占めた。震災を契機に中国での設備投資を見直した企業もほとんどなかった。
政治の変化注視
 今秋にも予定される共産党指導部の世代交代後の事業環境の変化を注視する姿勢も目立つ。指導部交代で事業環境や経営環境に「大きな変化がある」 「何かしらの変化がある」とした企業は有効回答の4割。「内需刺激策の拡充」(19社)、「環境技術開発に対する奨励策の拡充」(19社)など、自社の事業拡大につながる政策を期待する声が多い。
 今後の中国経済については、12年の実質国内総生産(GDP)成長率が「8%超~9%未満」との予想が53%と最も多く、次いで「7%超~8%未満」が38%で続いた。景気浮揚につながる金融緩和の早期実施を期待する声も多く、利下げを含めた本格的な金融緩和が鮮明になる予想時期を聞いたところ、「7~9月期」が28%で最多、「4~6月期」も24%に達した。

3割が中国人トップ 現地化へ幹部登用増える
 中国現地法人で中国人社員の幹部登用がどの程度進んでいるかを聞いたところ、最上位ポストが「社長」以上が3割を超えた。
 「部長」以上まで広げると9割近い。採用・育成策では「日本での研修」が88%と最も多く、日本本社で採用し駐在員とし,中国現地法人へ派遣する企業も5割を超えた。
 人民元を決済などで直接利用する動きも広がる。中国政府が元取引の規制緩和を進めていることに対応。為替変動リスクを軽減する元建て貿易決済はすでに「開始した」が有効回答の17%、「計画中」は28%に達した。元建て直接投資も「開始した」が10%、「計画中」が31%を占める。
 日本企業が人やお金の面で現地化を急ぐのは、中国市場の開拓を強化しているためだ。中国事業の売上高に占める中国国内販売の比率が「8割超」と答えた企業はすでに54%。うち「全量が中国国内向け」とした企業も16%あった。一方、全量を輸出する企業はゼロで、中国が低コストの労働力を生かして輸出する「世界の工場」から、消費の旺盛な「世界の市場」へと変化していることが日本企業からも見える。
 国内販売をさらに拡大するための対策(複数回答)では、現地有力企業との提携(53%)と販売代理店の増強(50%)が多く、販売子会社の新設・増設(28%)などを上回った。インターネット販売を利用すると回答した企業も19%あった。
 事業拡大に伴うリスクヘの対応も聞いた。中国企業が米アップルの多義能携帯端末「iPad」を商標権侵害で訴えたことで注目を浴びる知的財産権保護への取り組み(複数回答)
では、81%が「中国国内での特許・商標などの取得」を進めている。侵害された場合「徹底して法廷闘争に持ち込む」という企業も15%あった。

2012.05.03