電機 明暗くっきり 日立連続最高益 ソニー赤字拡大 2012年3月期決算

 電機大手の業績で明暗がくっきりと分かれているご日立製作所が10日発表した2012年3月期連結決算は純利益が2期連続で過去最高を更新。
一方、同日発表のソニーはテレビ事業不振により同社として過去最大の最終赤字に陥った。構造改革のスピードや、安定収益源を確立できたかで電機大手の好不調が分かれる構図が鮮明だ。
 「東日本大震災やタイ洪水の逆風はあったが、4000億円超の営業利益を確保できた」。10日の会見で、日立製作所の中西宏明社長はこう語った。連結営業利益(米国会計基準)は4122億円(前の期比7%減)と電機大手で首位を確保。純利益はハードディスク駆動装置(HDD)事業などの売却益も加わり、過去最高を更新した。
 けん引役はプラント関連機器や情報・通信システムなど社会インフラ関連の部門だ。かつて業績の足を引っ張った薄型テレビなどの部門は小幅の赤宇にとどまり、収益変動の大きい事業を切り離した効果が収益増となって表れた。
 今期も営業利益は2桁増と好調が続く。プラント機器など社会インフラ関連がけん引し、昇降機や建機も新興国向けに伸びる。電力関連も今期は火力発電所向けが伸び、黒字転換する見込みだ。
 本業の収益力を示す売上高営業利益率は、かねてから掲げてきた目標の5%を上回る5.3%を見込んでおり、中西社長は「達成の手応えを持っている」と自信をみせている。

ソニー赤字拡大 テレビで3割減収響く
 「大幅な損失になってしまった」 (ソニーの加藤優最高財務責任者=CFO)。ソニーーが10日発表した12年3月期の連結決算筆国会計基準)は最終損益が4566億円(前の期は2595億円の赤字)と同社としては過去最大の赤字に膨らんだ。
 主因はテレビ事業の苦戦だ。販売誠に価格下落も重なり、同事業の売り上げが3割近く減少。設備や在庫などの減損処理も響いて実質ベースで1480億円の営業赤字になった。そこに会計上の税負担の増加(繰り延べ税金資産の取り崩し)も加わり、全体の最終赤字
が拡大した。
 今やソニーの収益の柱の金融事業は1314億円の営業黒字を稼ぎ、映画と音楽も計710億円の黒字を確保。それでも、テレビや携帯電諸事業などの赤字を吸収できなかった。
 13年3月期は最終損益が300億円と5期ぶりの黒字浮上を目指す。足元で、テレビ事業は「パネルの調達コスト引き下げで想定以上に改善している」 (加藤CFO)ものの、今期も約800億円の赤字が依然として残る見通し。
 ソニーが戦略的に立て直す事業のうち、半導体はスマートフォン(高機能携帯電話)向けの伸びで大幅に収益が改善する見通しだが、携帯電話は今期も赤字が残るなど本格回復とは言い難い。

選択と集中 スピードに差
安定性高い分野、カギ
産業用機器など重電各社が堅調な業績を確保した半面、家電大手が大幅赤字になるなど明暗が分かれている。不採算事業から撤退する一方、それに代わる安定収益源を育成する「選択と集中」を進めたかどうかが差を分けており、日立製作所とソニーはその象徴だ。
 製造業として過去最大の赤字-。日立製作所が7873億円もの最終赤字に陥った
のはりーマン・ショック後の09年3月期。当時、先行き不安もささやかれた日立の復活
劇はここから始まる。
 骨子はデジタル家電など弱点の部門を「非中核事業」として遠ざけながら、経営資源
を安定性の高い社会インフラに集中したことだ。薄型テレビの基幹部品のプラズマパネ
ルの製造中止に伴い、国内唯一の生産拠点だった宮崎県内の工場も売却するなど、リストラを断行。その一方、上場子会社だった日立プラントテクノロジーを完仝子会社化するなど戦略的に安定収益源を育成した。
 日立と同様、堅調な業績をあげた東芝や三菱電機も東芝の場合は電力向け設備、三菱電はファクトリーオートメーション(FA)機器といったように部門営業利益が全体の4~6割を稼ぎ出す安定収益源を持つ。
 大幅な赤字を計上したソニーやシャープなど家電各社が本格的な合理化に着手したのは前期から。ソニーなどはリーマン後も主力のテレビ事業の拡大路線を修正せず、パネルから自社で内装する垂直統合方式にもこだわった。
 ようやく前期にソニーは「販売台数を追わずに収益性を重視する戦略に転換」 (加藤優CFO)。足かせとなっていたパネル製造の合弁会社を600億円の損失を出して売却した。日立に比べて3年遅れで本格的な構造改革が始まったともいえる。
 ソニーは15年3月期にテレビ以外の携帯電話、デジタルカメラ、ゲームの3事業でエレクトロニクス部門の営業利益の85%(2550億円以占を稼ぐ青写真を描く。パナソニックも住宅関連や電池などに経営資源を集中して収益力を立て直す。各社が数年後に現在の日立のような収益構造を築けるか。改革の進捗を市場は注視している。

         電機大手の連結業績
   売上高     営業損益      最終損益
日立(米国会計基準)  
    96,658 (4)   4,122  (▲7) 3,471  (45)
    91,000(▲6)    4,800  (16)    2,000 (▲42)
三菱電機(米国会計基準)          
    36,394(▲0)    2,254  (▲4)   1,120(▲10)
    37,400(3)    2,000 (▲11)      1,200 (7)
東芝(米国会計基準)
 61,002(▲5) 2,066 (▲14)     737 (▲47)
    64,000 (5) 3,000  (45)    1,350  (83)
シャープ(米国会計基準)
 24,558(▲19) ▲375(赤字転落)▲3,760(赤字転落)
    27,000(10)   200(黒字転換)  ▲300(赤字縮小)
ソニー(米国会計基準)
    64,932(▲10) ▲672(赤字転落)▲4,566(赤字拡大)
 74,000(14)   1、800(黒字転換)  300(黒字転換)
パナソニック(米国会計基準・3月期予想)
    80,000(▲8)  300 (▲90)   ▲7,800(赤字転落)
 (注)上段は2012年3月期実績、下段は13年3月期予想。単位億円。
   カッコ内は前期比増減率。▲は赤字、マイナス

2012.05.11