ツィッター生まれない日本 革新を拒む前例主義

 世界のスマートフォン向け基本ソフト(OS)の7割を握るアンドロイド。1日に世界で4億回のつぶやきを生むツイッター。無料通話サービスの先駆けスカイプ。世界で使われる革新的なネットサービスの生みの親が珍しく顔をそろえた。
 新経済連盟(代表理事・三木谷浩史楽天会長兼社長)が東京で開いた「新経済サミット2013」のパネルディスカッションだ。テーマは「破壊的イノベーションとは何か」だった。
 ツイッターの創業者、ジャックードーシー氏は今。「スクエア」という新会社で再び脚光を浴びている。
切手大のデバイスをスマホに差し込んでクレジットカードを読み取らせ、スマホを「おサイフ」にするサービスだ。 店舗側はタブレット端末やパソコンでデータを読み込む。コーヒーチェーンのスターバックスが全米7000店に導入した。
 ドーシー氏は講演で、キャッシュレジスターやPOS端末、クレジットカードの読み取り機が並ぶ従来の小売店舗の写輿をスライドで映し出し「アグリー(ぶさいく)」と切り捨てた。スクエアを導入したカウンターの写真は、ごちゃごちゃした機械がタブレット端末1台に置き換わり、すっきりしていた。
 こうした破壊的イノベーションは「偶然生まれる」(ドーシー氏)。米国にはその良さをすぐに認め、メーンストリームに引き上げる柔軟さがある。日本の場合、破壊的イノベーションはしばしば硬直性に阻まれる。「前例がない」という理由で古いシステムにしがみつく傾向がある。
 ベンチャー企業でアンドロイドを開発し、米グーグルの傘下に入って上級副社長を務めるアンディールービン氏は「最初に開発しようとしたのはデジカメ向けのソフトだった」と打ち明けた。開発中にデジカメからスマホに重心が移る市場の変化を見て、戦略を切り替えたという。
 スカイプ創業者で現在は投資会社アトミコの最高経営責任者(CEO)を務めるニクラスーゼンストローム氏は、スカイプにたどり着く前、有料の音楽配信サービスなどで何度も失敗した経験を話した。
 ルーピン氏とセンスドローム氏がそろって強調したのは「アジリティー(敏捷性)」だ。デジタルの世界はめまぐるしくトレントが変わる。「最初に立てた計画に固執していたら成功できなかっただろう」(ルーピン氏)
 今回の会合で最も印象に残ったのはマサチューセツツエ科大学(MIT)メディアラボ所長の伊藤穣一氏のコメントだ。「僕が成功したのは日本で一切、教育を受けなかったから。幼児は好きなときに好きな絵を描くが、小学校に入ると、勝手なことをしちゃだめ、とクリエーティビティー(創造性)をつぶされる。だから日本人は大人になると誰も絵をかかない」
 ホスト役の三木谷氏は、企業を縛る[規制]が、日本企業から柔軟性や敏捷性を奪っていると主張する。17日にはサミットの討議も踏まえ、規制緩和を求める提言を甘利明経済再生相に提出した。日本人の創造性を解き放つ制度改革につなげたい。
                                                                    (日経新聞 2013年4月22日)



2013.05.27