買収ファンド復調 M&A世界で3割増

 金融市場で買収ファンドの存在感が増している。欧州債務危機などで金融全般が苦戦を強いられるなか、ファンド勢は年金資金の流入増で運用資産が拡大。2011年の世界のM&A(合併・買収)総額のうちファンドによるものは前年より32%増え、全体の伸び(7
%増)を大きく上回った。
 「ファンド資本主義」ともいわれた金融危機前の勢いはないが、規制強化に苦しむ金融大手を尻目にウオール街での地位を高めている。
「資本の出し手である我々には欧州、新興国、米国いずれにもチャンスが広がっている」--。
昨年12月、投資家の前に現れた米買収ファンド最大手大手ブラックストーン・グループのシュワルツマン最高経営責任者(CEO)は強気一辺倒だった。
 自信に満ちた発言の直後には、同社が英ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)から英国内の一部の不動産ローン債権を購入することが表面化した。
世界の金融機関が欧州資産の圧縮に追われるのを横目に、果敢な投資に踏み込むブラックストーン。長期投資を前提にするファンドにとって、株価や資産価値が大きく下がった局面は絶好の投資機会にもなる。
 狙うのは欧州だけではない。有力な新型天然ガス、シェールガスを手掛ける米石油・ガス大手サムソン・インベストメント。米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は昨年H月、伊藤忠商事などと組み総額70億ドル(約5400億円)でのサムソン買収を決めた。息の長い成長が見込まれる資源エネルギー分野でもファンド勢の大型投資が目立つ。
 調査会社トムソン・口イターのまとめでは、11年の世界のM&A総額のうち買収ファンドによるものは約3075億ドルと前年比32%増え4年ぶりの高水準。総額に占める割合も09年の約6%から約12%に拡大した。2兆ドル規模の手元資金を抱えながら、積極投資に慎重な米企業とは対照的だ。
 ファンドの攻勢は資産の伸びにも表れる。ブラックストーンの資産残高は昨年9月末で1576億ドル。08年末より約7割増え、過去最高を更新した。今年に入り、160億ドルを上回る大型ファンドの組成が完了間近とも伝わる。危機後の低迷を脱し、資金集めにも回復の兆しがみえる。
ファンドの隆盛のカギを握るのは年金基金による長期マネーの流入だ。米テキサス州教員年金組合は昨年11月、KKRとアポロ・グロ-バル・マネジメントに60億ドルを出資することを決めた。
 年金マネーの流入は、今後も続く見通し。カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)のジョー・ディアー最高投資責任者(CIO)は「ファンド投資は長期的に従来の株式保有より3%ほど高い収益が見込める」と指摘する。
 だが、ファンド勢に死角がないわけではない。金融危機以前に投資した大型案件には一部で含み損が出ているもよう。金融市場が冷え込む中で思惑通り収益を上げられるか不透明な部分もある。
ただ、金融大手とファンド勢には規制面で大きな違いがある。危機後の規制強化で米金融大手は自己資本拡充が必要。収益源だった自己勘定投資の圧縮も迫られている。
一方のファンド勢は米証券取引委員会(SEC)への登録が義務付けられたが、厳しい資本規制からは逃れており、柔軟な事業展開も可能だ。

2012.01.23