ムーディーズ、野村HDをBaa3に。米欧大手も下げ検討、収益性低下を懸念

 投資銀行の格下げ圧力が世界的に強まっている。米格付け会社ムーデイーズ・インベスターズ・サービスは野村ホールディングス(HD)を1段階格下げし、投資適格級の最低水準とした。米ゴールドマン・サックスなど米欧の大手についても一斉格下げを検討中だ。欧州市場の低迷や先進国の金融規制強化が響き、投資銀行ビジネスの収益性が長期的に低下するとの見方が底流にある。
 ムーディーズが野村の格付けを引き下げ方向で見直すと発表したのは昨年11月9日。2011年7~9月期決算で10四半期ぶりの最終赤字(460億円)を計上したことを受け、その主因となった海外ビジネスの収益悪化を問題視した。
 野村は海外人件費など総額12億ドル(約1000億円)のコスト削減計画を公表。11年10~12月期決算では最終損益が178億円の黒字に転換したこともあって、「格付けが据え置かれる可能性がある」(幹部)との期待も出ていた。
 状況が変わったのは2月15日。ムーディーズは野村だけでなく、米欧アジアの主要投資銀行17社の格付けを一斉に引き下げる方向で見直すと発表した。その際、最大でどの程度格下げするかを投資銀行別に公表。野村の最大1段階に対し、ゴールドマンやJPモルガン・チェースは2段階、米モルガン・スタンレーやクレディ・スイス、UBSは3段階の可能性があるとしていた。
 ムーディーズは、欧州中央銀行(ECB)の大規模資金供給などで小康状態を保っている欧州市場の先行きも悲観的にみている。先進各国の金融規制強化が進めば、投資銀行の収益が悪化するとの懸念も強い。「A2」としていた主要投資銀行の格付けの平均水準を「Baaレンジ」まで下げるとしている。
  野村についてはコスト削減計画が顕著な進捗を見せており、今後の収益を押し上げる可能性がある」との評価も示した。業界全体への悲観的な見方が格下げに強く影響したもようだ。
  ただ野村の財務やビジネスに与える影響は限定的とみられる。金利スワップなどのデリバティブ(金融派生商品)取引で追加担保の差し入れを求められるが、その金額は200信円弱にとどまる。700億ドル強の手元流動性を抱える同社の負担は軽微といえる。取引の縮小や停止に動く取引先もみられないようだ。
  ムーディーズが今後の格付け見通しを「安定的」としたため、株式市場では「追加格下げのリスクが当面払拭された」 (ドイツ証券の村木正雄シニアアナリスト)との評価
も出ている。16日の野村株は朝方、前日比5円安の395円まで売られたもののすぐに切り返し、4円高の404円で取引晏終えた。
 もっとも信用力が収益性に直結する法人向け証券ビジネスを手掛ける野村にとって、投資適格の最低水準にある格付けが足かせになるのは避けられない。格付けが一度下がると、元に戻すには1~2年の時間がかかるとされる。当面は我慢の経営を強いられそうだ。

2012.03.17