巨額損失招いたデリバティブ 市場、新規制控え影響憂慮 FT

 企業のデフォルト(債務不履行)に備えた金融派生商品であるクレジットデリバティブは1990年代に米金融大手JPモルガン・チェースの専門家によって考案された。今、ウォール街で物議を醸しているこの金融商品が厳しい監視の目にさらされている。
 JPモルガンが23億ドル以上の巨額損失につながった複雑なヘッジ戦略の失敗に揺れるなか、デリバティブ取引の新規制導入を懸念する市場参加者は(金融当局の)寛大な対応を期待することが難しくなると憂慮する。
 クレジットデリバティブは、貸し手が借り手のデフオルトリスクをヘッジするために開発されたものだが、最近では相次ぐ巨額損失の引き金になっている。
  例えば、米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は2008年、大手銀行の住宅ローン担保債券に対する信用保証により巨額の損失を被り、連邦準備理事会(FRB)に救済された。ドイツ銀行はデリバティブ取引で10億ドル超の損失を被った。
 トレーダーによると、JPモルガンはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)指数に絡む大規模なポートフォリオを構築していたという。ある指数のプロテクション(保証)の売りによって得た収益は別の指数のプロテクションの買いに充てられる。
 こうしたポートフォリオはヘッジコストの節減を目的とするモデルに大きく依存している。米マサチューセッツエ科大学(MIT)のアンドリュー・ロー教授は「すべての金融機関はリスクを取ったときのみ利益を上げることができる。リスクをすべてヘッジしてしまえばリターンは得られない」と指摘する。
 米金融規制改革法(ドッド・フランク法)が10年に承認されて以来、国内の金融業界はデリバティブ改革の動きに反発してきた。金融業界は、デリバティブ取引に関する規制強化で流動性が損なわれ、銀行が融資や債券のリスクをヘッジすることができなくなり、ひいては企業の資金調達コストが上昇すると警告してきた。

2012.05.18