金融ニッポン 危機の中の勝機

世界に激震が走ったリーマン・ショックから、まもなく4年。危機のトンネルから抜け出せない欧米を横目に、日本の金融市場や銀行・証券の地位は相対的に高まってきた。復活への最後の機会--。再評価の兆しが出てきた日本の「金融」の力に、この国の浮沈がかかっている。
 3月下旬。欧州危機のさなかに来日したイタ刀ア首相マリオ・モンティが、日本の有力な銀行・証券の首脳と会合を持った。「わが国の国債を見放さないでほしい」。伊首相の□から出たのは、国債の購入を求める言葉だった。世界中の投資家が欧州から資金を引き揚げるなか、伊首相にはジャパンマネーは頼れる存在と映った。
邦銀が優等生に
 不良債権の問題にようやくケリをつけた日本勢は、信用力の目安となる格付けなどの面で、いつの間にか世界の優等生に変身。再び海外への攻勢をうかがう。企業が大型投資に利用する協調融資のとりまとめ役として、三菱UFJ、三井住友、みずほの三大銀行グループが2012年上半期に、世界の中でそろって上位10社以内に入った。
 バブル崩壊後の株価下落や経済の停滞で、衰退への道を歩み出したかのように思われた日本。銀行に代表される金融の地盤沈下は、その象徴だった。米欧の金融危機のなかで、この国に注がれる視線は悲観一色ではなくなりつつある。
 ニクラス・ゼンストローム。ネット電話の世界的なベンチャー企業ス力イブを創業し、今はロンドンでベンチャーファンドを運営する起業家が最も注目する国の一つが日本だという。すでに都内の翻訳業ベンチャー「ゲンゴ」に投資し、次の来日の機会をうかがう。
 技術は「宝の山」
 米投資会社リバーサイド・パートナーズ最高経営責任者のスチュワート・コールも6月に日本を訪れ、「卓越した技術力を持った企業が多い日本は宝の山」との意を強くして帰国した。
 金融市場に目を凝らせば、「失われた20年」と呼ばれるバブル崩壊後の歳月にも、「成長」の芽は確かに膨らんでいる。
 今年6月末までの20年間で日経平均株価は4割超下がったが、全体の2割の企業は株価が上昇した。10倍超になった久光製薬やユニ・チャームを筆頭に54社の株価は2倍以上になった。高い製品シェアや技術力を武器に、難局を乗りきった。
 日本経済の構造的な弱さとされてきた「高齢化」も見方を変えれば金融の活性化につながる。
 「世界有数の長寿国である日本では、リスク資産への投資がこれから活発になる」。米大手運用会社ブラックロックのアジア太平洋会長マーク・マッコームは今年1月の就任来、言い続けている。
金融ニッポンの潜在力の源泉である1500兆円の個人金融資産は50歳以上が保有する。
中高年層が安心して買える投資信託などを投入すればジャパンマネーを引きつけることができる。
 地銀と名門組む
 18世紀にスイスで創業した名門銀行ロンバー・オディエは、ここ数年で静岡銀行などの有力地方銀行と相次ぎ提携した。
地方の老舗企業の事業継承や、創業一族の資産管理といったプライベートバンキング業務を手がけるためだ。
 日本には創業200年以上の企業が酒造や菓子、工芸品など3900社余りある。これはドイツ(1800社)や英国(460社)を上回り世界で最も多い。
米欧を追いかけた戦後、バブルの生成と崩壊を経てわかったことは、背伸びをしすぎず、自国の実情を見きわめる大切さだ。企業や家計の強みを引き出すことができれば、この国の金融がよみがえる余地はある。

2012.06.29