海外で企業決済円滑に 三井住友銀や三菱UFJ銀 供給網の資金取引支援

 国内外の大手銀行が金融面から企業の海外でのサプライチェーン(供給網)づくりを支援している。三井住友銀行などは大企業が海外の取引先との資金のやり取りを効率化するシステムを提供取引先の資金繰りを円滑にし、大企業も手元資金を有効活用できるようにする。国内外での供給網の発展に合わせたサービスをテコに、アジアを中心にした海外での金融取引の拡大に結びつける。
 自動車や電機など多くの大企業は、海外の子会社を通じて現地企業などとの間で部品などの供給網を築き、海外事業を拡大している。供給網を重層的に張り巡らせている分、日々発生する支払いの管理も複雑になり、企業の負担になっている。
 銀行が取り組んでいるのは、供給網に連なる多くの企業が効率的に資金を回せる仕組みづくりだ。企業は資金効率が高まって柔軟な財務戦略をとれるだけでなく、優良な取引先を囲い込める。
 三井住友は大企業に部品などを納入する取引先が、決済期日の前でも代金を受け取れる仕組みをつくり、国内外の大企業などに提供している。取引先が多数にわたる場合などに資金のやり取りを効率的に管理できるような仕組みも整えた。
 期日前の支払いでは、代金から期日までの利息分を割り引いて支払う。その分は銀行の収益となる。銀行は期日に企業から資金を回収する。現地の取引先は割り引かれた分は負担になるが、自分で運転資金を借りるよりも低コストで資金を確保できる場合が多い。
 海外の現地生産の場合、部品を調達してから30日~120日後に代金を支払う契約が多いという。支払いまでの期間が短いと、大企業は余裕資金が乏しくなり、借り入れが増えるケースもある。逆に現地の取引先は、現金になるまでの期間が長いと資金繰りが厳しくなりやすい。
 新しい仕組みを取り入れることで、大企業は資金効率の向上が期待できる。取引先か低利での資金調達が可能になることを踏まえ、支払期日の延長を要望できるためだ。期日が45日から60日に延びれば、延長した間の余剰資金を違う用途に振り向けられる。借り入れ比率も抑えられ、財務の改善につながる。
 日本では手形割引といった類似の仕組みが以前から浸透していたが、海外ではこうした仕組みがなく、効率的な資金運用が課題だった。
 三井住友は独シーメンス、東芝、米食品大手ゼネラルーミルズなど約120社に提供している。
JPモルガンも、17通貨に対応する同様のシステムを提供しており、世界の大企業約50社と契約した。日本企業や海外の日系企業との取引にも力を入れている。
 三菱東京UFJ銀行もアユタヤ銀行の買収を決めたタイで、日系企業の供給網構築を金融面から支援する。アユタヤ銀の取引先である地元企業を紹介し、効率的な決済システムも提供する。タイをはじめアジアの7力国・地域では主に日本企業、欧米では現地企業向けにサービスを強化する。
 JPモルガンでサプライチェーンーファイナンスの責任者を務めるマイケルーマクドノー氏は「最近3~4年間で米プロクター・アンドーギャンブル(P&G)など多国籍企業の導入が相次いでいる」としている。

銀行、アジアが主戦場
 銀行がサプライチェーンーファイナンスに力を入れるのは、多国籍企業を含め、アジアを中心に海外での企業取引を深める契機とするためだ。
  「シーメンスの中国の取引先に説明に出向き、決済口座の開設などを手助けした」。三井住友銀行が4月に設けたグローバルーサプライチェーン・ファイナンス室。阿部芳久室長は、企業の供給網構築の支援も新たな銀行の役割だと強調する。
 これまでの海外での貿易金融は、LC(信用状)を使った貿易資金の決済が多かった。輸出入企業と貿易相手先の現地銀行を含めた4者間の取引だった。
 世界各地に拠点を持つ銀行が仲介役になれば、各地域の銀行を経ずに資金決済にかかわれる。
大企業は銀行の支援で海外での供給網の運営が円滑になる。日本から資金の動きを監視することもできる。銀行はこのサービスをテコに、ほかの金融取引を広げられる。(日経新聞2013.11.12)

2013.11.12