金融力向上のために 骨太の金融経済支える

 日本経済の復活のためには金融の再生・強化が不可欠-。日本経済新聞社は2012年9月、こうした問題意識からニッポン金融力会議を立ち上げ、シンポジウムや新聞の長期連載企画「金融二ッポン」などで議論を重ねてきました。日本の金融力向上には何が必要なのか。1年余りの議論の成果を3つの提言にまとめました。
1.企業育成の原点回帰 成長の芽、成長の芽、見極め重要
金融の原点は家計から預かったお金で企業を育てることにある。高度成長期は預金を集めた銀行が企業の資金需要に積極的に応じ、成長を支えた。経済が成熟した時代に求められるのは、より多様なリスクマネーの供給だ。 個人金融資産約1590兆円(2013年6月末)のうち、現金・預金は860兆円と54%を占める。預金を扱う銀行は安全を重視した融資に傾斜しがちだ。次の成長の芽を見逃していないか、融資の現場が形式に流れていないかを点検する必要がある。
 元三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)の行員で融資研修の講師を務める吉田重雄氏は「土地などの担保に依存しない発想が求められる」と指摘する。不動産担保からの脱却を目指す動産担保融資(ABL)は有力な手段だ。日本動産鑑定の久保田消理事長は「助産の価値を見極めることは企業そのものを深く理解することだ」と話す。
 一方、2012年度の国内のベンチャーキャピタルによる投資額は1026億円で、米国の4%にとどまる。池尾和人・慶大教授は「起業して間もない企業を支える担い手が必要」という。
 インターネットを使った新たな資金調達手法である「クラウドファンディング」もそのひとつ。金融庁は裾野の拡大を検討しており、資金が円滑に流れるための制度設計が求められる。
2.海外展開へ人材育成「日本中心」からの脱却
 海外で邦銀の存在感が高まっている。国際決済銀行(BIS)によると、2013年3月末の国際融資の世界シェアで邦銀は13%とトップ。1~9月の世界のプロジェクトファイナンスの実績は、三菱UFJフィナンシャルーグループなどの3メガ銀が上位を席巻する。
 ただ、邦銀の台頭は、リーマン・ショック後に財務基盤の劣る米欧勢が退潮した結果、浮かび上がったという側面もある。邦銀はバブル経済崩壊後に海外業務から相次ぎ撤退しただけに、持続的な成長に向けた取り組みが必要だ。
 そのためには海外展開を支える人材の育成が欠かせない。邦銀の経営陣は大半が日本人で、現地スタッフから幹部に登用する仕組みも必要になる。JPモルガン証券の森口隆宏会長は「グローバルな大企業の国際戦略全体をサポートできる体制を目指すべきだ」と指摘。日本中心の発想から脱却すべきだという。中小企業も海外進出を加速しており、地域金融機関にとっても海外展開は喫緊の課題だ。
3.長期投資促す努力を 意識改革は教育から
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」による株式相場の上昇を受け、株式投信への資金流入が続いている。今年1~9月の設定額は累計で31兆円と前年同期比82%増加。解約一償還額を差し引いた純資金流入額は8ヵ月連続のプラスだ。だが「貯蓄から投資」の流れを太くするには課題も多い。
 日本の株式投信の平均保有期問は2.2年と米国の3.5年に比べて短い。証券会社や銀行が売りやすい新ファンドを重点的に販売しようとするのが一因だ。個人も値上がりしたらファンドをすぐに売却して利益を確定しようとする傾向が強く、投信が長期投資の器に育っていない。
 転機になるのが2014年1月に始まる少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)だ。証券会社や銀行は個人に長期投資を促せるかが問われている。
 高い利回りを得るには大きなリスクを取る必要がある。そんな投資の常識に反した金融商品の勧誘は絶えない。「知識が断片的で不正確」。投資教育に携わる岡本和久氏は意識改革が必要と説く。(日経2013.10.28)

2013.11.20