キャリアクライシス

あなたは自分のキャリアについて、どのような将来像を描いているだろうか。中長期のキャリア目標を明確にして、そこに向けて着実にキャリアアップをはかり、計画的に自分のキャリアをデザインしていこう!そのためにスキルや資格が必要ならば取っていこう。と考えているのではないか。
しかしながら、将来的な目標に向けて、計画的に一つ一つキャリアを積み上げていくというキャリアデザインの考え方が、実はいま、急速に成り立たなくなろうとしている。
なぜなら「キャリアクライシス」の時代が、日本にも訪れようとしているからだ。

1.キャリアクライシスに備えよ

「キャリアクライシス」とは、自分が描いてきたキャリアの将来像が、予期しない環境変化や状況変化により、短期間のうちに崩壊してしまうことを言い、変化の激しい時代に生きるビジネスパースンの誰もがそのリスクを負っている、きわめて今日的な危機的状況を言う。
キャリアクライシスは、誰にも確実に訪れる。ひとたび、危機を逃れたかに思えても、そこがいつの間にか地雷原の真っ只中に立ち尽くしているといったことが、日常的に起きる時代に突入しようとしている。ある日突然に自分のキャリアが陳腐化し、自分のキャリアの将来像が、あっという間に崩壊してしまう。転職価値が激減してしまう。それがキャリアクライシスだ。そういう事態がこれからは、どんどん起きてくる。
キャリアクライシスが起きる背景の大きな流れとしては、経済のグローバル化、IT技術の進展高度化、規制緩和、デジタル化・・・などの劇的な環境変化がある。求められるコンピタンシーや人材像が大きく変化し、それまで価値あるものと思っていた自分のキャリアが、何の価値もないものになってしまう可能性がある。

そうした中で、あなたはいま、自らのキャリアを巡る状況をどのような視点でとらえ、どのような戦略をとるべきなのか。

2.キャリアリスクが増大している

会社が示す人材像に向かって、自分のスキルアップをしていって、いざ転職しようとしたときに、そうした人材は転職市場で余り必要としていないと言う現実が待ち構えている。社外で通用するキャリアを磨くことが大事だ。いま勤めている会社の経営方針や人材育成方針のみに盲従することはキャリアクライシスを起す危険がある。
アメリカのビジネスパースンは、一生のうち、ジョブチェンジは9~12回、キャリアチェンジは3~5回するといわれる。ジョブチェンジは、会社が変わる。キャリアチェンジは自分のキャリアそのものが大きく変わると言うことを意味する。アメリカではもはやジョブチェンジではなくて、キャリアチェンジにどう備えるかが重要になっている。
特にIT業界ではすさまじい変化が起きている。実際、サン・マイクロシステムズのCEO、スコット・マクナリーは、社員に対して、同じ仕事を2年以上続けるなと明言している。キャリアが陳腐化する可能性があるからだ。それではスキルの蓄積が出来ないではないか、と思うかもしれないが、現実は、スキルが蓄積される頃には陳腐化するだけだ。スキルは蓄積するものではなくて、更新するものだ。
ひとつのキャリアを一歩一歩積み上げていくというパターンは、もはや不可能。予想外のキャリアクライシスに対しても柔軟に対応できる能力を、会社主導ではなく自分主導で身に付けていくことだ。

3.変化の時代の時代のキャリア構築は予定通りにはいかない

会社主導のキャリア開発から、個人主導のキャリア開発へ。変化の激しい時代には、キャリアは基本的に予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される。そのため、個人が自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、偶然を必然化する、つまり、偶然の出来事を自ら仕掛けていきことが必要になってくる。
自分にとって好ましい形で偶然を必然化するには、次の5つの特徴がある。

偶然を必然化する行動・思考パターンの5つの特徴:

  1. 好奇心(Curiosity)
    いま、自分が持っている具体的な目標に直接、必要であるかどうかにかかわらず、多種多様な事柄に広く好奇心を持つこと。
  2. こだわり(Persistence)
    一度、計画を立てて、実際に進めてみて、その結果、うまくいかなくても、ある1つのテーマについて長期にわたって、一定のこだわりを持つ。自分の考えや価値観に、根底の部分ではこだわりを持ち続ける。
  3. 柔軟性(Flexibility)
    環境がどのように変わっても対応し、いまの具体的計画にとらわれず想定外のチャンスも活かすことができる。
  4. 楽観性(Optimism)
    どのような結果になろうとも、自分のキャリアにとって、それなりに役立つ部分があったとポジティブにとらえることができる。あるいは役立つようにしてしまう。
  5. リスクを取る(Risk Taking)
    変化が激しく、先行きの見えない時代には、自らリスクを取らなければリターンは少ない。受身でもリスクは向こうからやってくる。

社外で通用すると思われる目先にスキルや特定の資格を身に付けたとしても、それがいつ陳腐化するかわからない。キャリアクライシスがいつ起きても不思議ではない状況の中で、柔軟に自分のキャリアを仕掛けていくような行動パターンや行動能力が、個人にとって最も重要になりつつある。

4.カギを握るのはパーソナリティ

パーソナリティ評価要素:

  1. 影響欲/エゴドライブ(Ego-drive)
    この指標は、他人を説得したいという内的欲求、説得することで個人的な充実感を得る。
  2. 復元力/エゴストレングス(Ego-strength)
    この指標は、他人からの拒否・拒絶をうまく乗り越え、批判を前向きに受け止めて、自分がさらに成長するための有効なアドバイスとして活かせる力を示している。
  3. 社交性(Sociability)
    この指標の数値が高い人は、人と関わったり、人と一緒に働くことを好む。
    特に、1対1の関係を築くことに優れ、チームワークを重視する傾向がある。
  4. 好印象欲(Gregariousness)
    この指標の数値が高い人は、外交的で活気に満ちた楽天家。積極的でたくさんの人の中で働くことを好む。
  5. 感謝欲/サービスマインド(Accommodation)
    この指標は、他の人のために何かをすることを好み、サービス精神が旺盛。人々から認められたり、感謝されるために努力を惜しまない。
  6. 徹底性(Thoroughness)
    この指標は、慎重で責任感が強い。一度与えられた任務を完了させるためにはどんな努力も惜しまない。
  7. 自己管理(Self Structure)
    この指標は、独立心が強い。独自の目標を掲げ、自分の行動を管理する。
  8. 外的管理(External Structure)
    この指標は、外部から与えられる規則や決まり、枠組みや手順などを重視する。会社や組織などの権威を尊重する。
  9. 切迫性(Urgency)
    この指標は、物事を直ぐに片付けなければいけないという内的切迫感を示している。 気が短く、現実離れした期待を抱く。

上記のパーソナリティ評価要素は、一人一人の社員の動機を分析評価し、より高い成果を出すためのジョブマッチング(適材適所)に利用している。価値あるキャリア即ち、ハイパフォーマンスに必要なのは、動機とコンピタンシーのマッチングができることである。

社外で通用すると思われる目先にスキルや特定の資格を身に付けたとしても、それがいつ陳腐化するかわからない。キャリアクライシスがいつ起きても不思議ではない状況の中で、柔軟に自分のキャリアを仕掛けていくような行動パターンや行動能力が、個人にとって最も重要になりつつある。

5.キャリア選択の「ナンバーワンキャリア」と「オンリーワンキャリア」

あなたのキャリアについて、考えうるパターンのスキルとコンピタンシーをマッピングしてみる。

  1. ナンバーワンキャリア選択:動機にマッチングするスキルやコンピタンシーを主として活用する仕事を選択して、そのコンピタンシーやスキルを徹底的に発揮していこうとする。もともと得意で大きな喜びを感じることが出来る仕事に自分の能力をフルに発揮して勝負をかける。人は動機とマッチングしたスキルやコンピタンシーを仕事の中で存分に活用し、大きな成果実績を挙げたときほど充実感を覚えることはない。
  2. オンリーワンキャリア選択:動機にはマッチングするが、そのコンピタンシーやスキルはまだ仕事の中では顕在化しておらず、本人も気づいていないような分野がいくつもある可能性が高い。そこでいろいろな仕事に貪欲にチャレンジし、経験してみることで自分のポテンシャルを発掘することが重要になってくる。このような過程を経てさらにダブルキャリア、トリプルキャリアといった複数のキャリアを持ち、曽野組み合わせにより、自分のキャリアの希少価値を高めていくことが出来るようになる。他の人にないキャリアを持つと言う意味で「オンリーワンキャリア」と呼ぶ。

6.職種タイプ別の人材要件

キャリアが最も良い状態は、そのコンピタンシーやスキルが動機にマッチングしているパターンだ。

  1. ジェネラリスト:上から与えられたWHATについて、HOWを考え、部下に任せる。HOW専門職。スキルベースでかなり仕事が出来る。管理能力というマネジメントスキルが要求される。HOWとはまさにスキルの世界の仕事。
  2. スペシャリスト:特定の分野の専門知識を用い、HOWの部分について専門的な見地からアドバイスしたり、歯止めをかけたりする仕事に向く。自分ではWHATもつくらない、DOもしない。専門スキルが何より重要。
  3. プロフェッショナル:自分で仕事を提起し、顧客に提案を行い、特定分野の高度な専門的スキルを駆使して、顧客に高い付加価値を提供していくと言う形で、仕事のサイクル全体を自分でコントロールする。コンピタンシーが重要。WHAT構築能力こそ典型的コンピタンシー。このプロフェッショナルの組織を統括し、リードしていくのが、プロフェッショナルリーダー。
  4. ビジネスリーダー:ベースになる儲かる仕組みそのものをつくったり、変えたりする人。経営一般のスキルと専門分野のスキルのバランスをとりながら、より大きなサイクルを回していく。
  5. イントレプレナー(社内起業家):ビジネスリーダーよりも広い経営一般のスキルを駆使し、新規事業や新業態を立ち上げていく。
  6. アントレプレナー(起業家):企業経営そのものに強い動機を持ち、サイクル全体をひたすら自分の意思で徹底的に回していこうとする。

いまの時代、スペシャリストやジェネラリストよりも、プロフェッショナルやビジネスリーダーが求められている。それはスキルマッチング重視から、コンピタンシーマッチング重視へと、大きく変わってきたことを意味する。さらに動機とマッチングすれば、突出したコンピタンシーで、超一流のプロフェッショナルやビジネスリーダーへと飛躍していくことになる。
イントレプレナーやアントレプレナーはどうか。同じように基本的にはコンピタンシーが必要だが、このレベルになると、強い動機との完全なマッチングが絶対不可欠なものになる。修羅場を何度もくぐりぬける経験がないと成功しない。艱難辛苦やつきものに取りつかれたような猛烈な仕事振りを何ら苦とせず、むしろ乗り越えることに満足感を抱く。

変化の激しい時代、着実なキャリア形成が不可能になった現在、キャリアチェンジの偶然性を必然化する手立てを自分独自の視点から構築することが求められている。