クラウドによる新しい変革の波、日本再生への道

リスクこそ自分を鍛える糧、成し遂げた充足感が次の挑戦へ駆り立てる。

1.クラウドが切り拓く日本再生への道(「共有」によって高める国際競争力)

使うほどメリットが高まる 日本の競争力向上に貢献

日本ユニシス専務執行役員ICTサービス部門長 角 泰志氏

日本企業のICT利用は多くの場合、ユーザーが得意なアプリケーションをSIベンダーに外注し、ハードウェアは自社で運用・管理するという形態である。一方、欧米ではアプリケーションをユーザーが開発し、システム運用やインフラはアウトソースするのが普通だ。日本の国際競争力と言う点で、このICT活用の違いが影響しているのではないだろうか。
クラウドの本質は「共有と利用」である。インフラやアプリケーション、情報・コンテンツを共有することで、利便性や即時性が高まると共にコスト削減になる。また、無駄なエネルギーを抑える省エネ効果も出てくるだろう。したがって自社所有型のプライベートクラウドでは,真のクラウドの恩恵を受けられない。インフラ共有型のプライベートクラウドとパブリッククラウドを利用するハイブリッドクラウドが最適解と考える。
どんなに投資して開発したシステムでも、稼働開始の日から陳腐化が始まる。一方、クラウドは利用の拡大に合わせてアプリケーション、インフラに最新の技術が投入されているため、使えば使うほど進化していく。そしてクラウド上にデータやコンテンツが集まり、アプリケーションと連携することで、利便性はさらに高まり、ビジネスイノベーションへとつながる。
その点で今後重要になるのはデータとコンテンツ、そしてそれを支えるプラットフォームだ。日本では電力や通信環境など優れたインフラが整備されている。それをベースとしたセキュアなエンタープライズクラウドが、日本の目指す領域である。クラウドのリソースは世界のどこにあってもいいが、企業にとって重要なデータは、インフラが整い国情の安定した国にあるべきだ。だから日本国内で大規模なクラウドを設け日本企業がその情報を共有していけば、国際競争力を高めていける。
もはや我が国の企業はICTで国内の競合他社差別化している時ではない。起業・業種を超えた"日本クラウド"で世界と勝負する時ではないだろうか。

2.先進テクノロジーが拓く企業と社会の未来価値

ストリームとハイブリッド 技術組み合わせ、より賢く

日本IBM執行役員開発製造担当 久世和資氏

IBMは2008年から「Smarter Planet」というコーポレートビジョンを掲げている。
天候変化などの自然現象から人々の社会生活まで、かつてはそれぞれ別のものとして存在していた物理現象を進化したITにより相互に結びつけることで、地球をより賢く、スマートにしていくという意味合いだ。このビジョンの下、IBMは重要な研究テーマとして「ヘルスケア・トランスフォーメーション」「スマーター・シティ」「クラウド」など8項目を挙げている。クラウドは、情報量が年々急拡大するなかで、それに対応する技術の一つであるが、日本IBMではその他にも「ストリーム・コンピューティング」と「ハイブリッド・システム」について重視している。
伝統的なコンピューターシステムがいったんため込んだ情報を処理するのに対して、ストリーム・コンピューティングはリアルタイムで入ってくる膨大なデータを高速に処理する手法だ。例えば金融トランズアクションの解析や、各種のセンサーが収集したデータによる気象予測や渋予測など、さまざまな場面で発生する膨大で多様なデータを即時に処理することが求められるアプリケーションでの活用が検討されている。既に銀行や証券会社、交通管理などだけでなく、新生児の血圧や心拍数などをモニタリングし容態の変化を早期検知する医療システムにも適用されている。
一方、ハイブリッド・システムは、スーパーコンピューターのように計算を高速で実行できるシステム、ネットワーク・システム、セキュリティー処理を高速で実行できるサブシステムなど各分野で特化したシステムを組み合わせて、Smarter Planetのソリューションを実現するのに最適化したシステムを1つのコンピューターとして構成する方法である。IBMではその1つとして、今年4月にネットワーク処理を高速化する「ワイ―スピード・プロセッサー」を発表した。
ハイブリッド・システムが開発されると、リアルタイムの処理だけでなく予測まで高速に実行する環境が可能になる。例えば、航空機や自動車開発では実際に試作機を造らずにシミュレーションのみで実現したり、原子炉の開発やその寿命のシミュレーションを高速化でき、開発スピードの大幅な向上、開発コストの削減につながる。
今後はこうした大容量のデータを高速処理する技術をクラウド上に展開していくことで、Smarter Planetが実現されていくだろう。

3.クラウドによる新しい変革の波

(次世代情報システムがもたらす新ビジネスモデルとグローバル化)

要素技術の進化が原動力 次世代ICTによるスピード経営

日本オラクル クラウド&EA統括本部シニア・ディレクター
クラウドエバンジェリスト 入江 宏志氏

クラウドが本格化していく2010年以降は第4の情報通信革命の時代で、クラウドによるスケールの大きな社会変革が始まる。第1に情報通信革命では、1964年からの汎用コンピューターによる集中化と事務効率化が進んだ。第2は85年からのパソコンによる分散化の時代で、第3は95年に始まるインターネットによる企業のグローバル化の時代であった。
オラクルは自社開発のみならず、ここ数年で約60社を傘下に収め、クラウドに対して技術やビジネスモデルをM&Aという手法で手に入れて進出している。その結果、SaaS/クラウド事業者に対するプラットフォーム提供者、クラウド製品の提供者として、クラウドのユーザー側、供給側の双方を幅広くサポートしている。
拡大するクラウドを支える技術は仮想化や高速化だけではない。要素技術の更なる進化が求められる中で、今後のキーテクノロジーとして様々な技術が注目されている。例えば、情報爆発に対応し高速でトラフィック処理を行う「次世代型KVS」、グリッド、インメモリー技術などにより超高速トランズアクション処理をする「エクストリーム・とrタンずアクション・プログラム」、常に変化するルールに基づき、必要なデータのみを迅速に抽出する「CEF(複合イベント処理)」」、データを活かしスピード経営を実現するための「リアルタイム・データウェアハウス」の4つが挙げられる。
クラウドは、誰でも安く、便利に使えるパブリッククラウドから企業向けのプライベートクラウド、企業グループに対応したハイブリッドクラウド、そして業種連携を実現するインターネットクラウドへと発展していく。その過程では、多様なサービスの提供とそれを支えるテクノロジーの発展が不可欠であり、新旧の技術の融合も欠かせない。
日本におけるクラウド市場は、単に欧米のビジネスモデルを輸入するのではなく、業種特化型、すなわち個々の顧客にカスタマイズしたモデルを提供する方が適していると言える。
また日本に限らず海外のデータセンターをバーチャル活用するのも一つの方法だろう。
経営層が考えるべきは、クラウドの時代に生き残るためのスピード化であり、クラウドをベースにしたビジネスのビジョンである。また、局面に応じて、IT携帯の集中と分散をフレキシブルに組み合わせる柔軟性も必要だろう。クラウドのメリットを活用しながら、まったく新しいモデルを創造する「新大陸(アフタークラウド)への挑戦」が重要になってくる。