グローバルエリートを育成せよ!燃え上がる世界教育戦争

世界最高の教育を求め、欧米の一流大学に群がる世界の若者。国力アップのために、世界レベルのエリート育成に励む国家。"世界教育戦争"が始まった。 グローバルエリート育成を目指す、世界競争が始まった 「合格率は過去最低の6.2%」―――。今年、ハーバード大学には、世界中から3万4950通もの出願が寄せられた。ハーバードだけではない。スタンフォード、イェ―ル、MIT、コロンビアなど、他のトップ大学にも応募が殺到し、合格率は前年を下回った。
米国での受験者増の背景にあるのは、留学生の急増だ。中国やインドなど新興国の台頭により、世界全体の留学生は2000年の200万人から08年には330万人へと増加。その多くが目指すのは、英語圏の大学である。
国力低下がささやかれる米国だが、こと高等教育に限ればその強さに陰りは全く見られない。世界大学ランキングでは、上位30校のうち3分の2は米国の大学が占める。これはどのランキングでも共通する。なぜ世界の若者たちは、米国のトップスクールを目指すのか。最大の理由は、それがエリートへの登竜門になるからだ。
エリートとは、高い知性や技能、アイディアにより、社会に影響力を及ぼす人間と定義できる。政治リーダー、経営者、起業家、研究者、芸実か、知識人などである。
ところが、グローバル化とIT化により、優れた「個」が活躍する舞台は、世界中に広がりだした。これまでエリートがそれぞれの国に留まっていたのに対し、今では"グローバルエリート"とでもいうべき一群が生まれている。国内型エリートとグローバルエリートの間では、手にすると見や影響力に格段の差がつき始めているのだ。
グローバルで活躍するには、世界レベルの教育と人的ネットワークが欠かせない。その両者を手にする近道として、「米国の一流大学」の需要が爆発しているのだ。

東大とハーバードを天秤にかける時代

グローバルエリートの育成は、国という単位でも重要性を増している。現代における国力の源泉は、「頭脳」である。知的エリートの質こそが、その国の政治、経済、学問の競争力を左右する。
現在、「国」谷の取り組みで先頭に立つのは韓国だ。過去10年で米国トップ大学への留学生は急増。ハーバード、スタンフォードへの留学生はともに300人を超え、世界第3位へと駆け上がっている。
そして今、韓国は更なる大胆策を打ち出している。韓国最南端に位置する済州島。約56万人がこの島で現在、17億ドルを投じる「国際教育都市」プロジェクトが進行している。
韓国政府は、都市内の規制を大幅に緩和し、公用語を英語に設定。海外の一流スクールを済州島に呼び寄せ、グロ0バルエリート教育を行うというのがその狙いだ。
今年9月には、卒業生の約4割がオックスフォードやケンブリッジに進学する英国の名門校」、メ―ス・ロンドン・カレッジエイト・スクールが開校。15年までには、12の小中学校・高校が完成し、9000人が通う都市へと生まれ変わる。
一方、日本はこうした"世界教育競争"に出遅れ気味だ。10年にはハーバードへの留学生が100名迄に減り、人口500万人のシンガポールにまで抜かれてしまった。15歳時点の学力でも、PISA(学習到達度調査)スコアでもアジア諸国の後塵を拝している。
だが、日本でも新たな動きはある。08年、ベネッセコーポレーションは米国トップスクールを目指す塾「ルートB」を開校。昨年のイェ―ル大2名合格に続き、今年はハーバード大を含む一流大学への4名が進学する見込みだ。日本のエリートの卵が、東大とハーバードを天秤にかける時代が近付きつつある。
海外の大学に負けじと、東大もグローバル化へと舵を切っている。東大の田中明彦副学長は「優秀な留学生を獲得するため、魅力的なプログラムを作っていく」と語る。20年までに留学生を現在の2割増となる3500人へと拡大。12年には教養学部に「国際教養コース」を新設するなど、英語だけで学位をとれるコースを増やしていく。
世界で盛り上がるエリート育成競争に日本はどう対応して行くべきか。国力の差が生じる激烈な競争の中で日本がサバイバルできるか、その本気度が問われている。

世界の変化―急増する留学生、目指すは米国―(OECD)

世界は空前の留学ブーム
新興国からの留学生が急増中

00年 200万人
05年 290万人
08年 330万人
(内訳 アジア50%、アフリカ12%、欧州24%、南米7%、その他7%)

英語圏の人気は盤石―留学市場のシェア(2008年)―(OECD)

米国18.7%(2000年の24%からシェア低下。だが依然として圧倒的な地位を保つ)
英国10.0% ドイツ7.3%、フランス7.3%、オーストラリア6.9%、カナダ5.5%、ロシア4.3%、日本3.8%、至り2.0%、スペイン1.9%

米国の独り勝ち状態―世界大学ランキング2010年(Times Higher Education)

1.ハーバード大 2.カリフォルニア工科大 3.MIT 4.スタンフォード大 5.プリンストン大 6.ケンブリッジ大 7.オックスフォード大 8.カリフォルニアバークレー校 9.インペリアルカレッジロンドン 10.イェ―ル大 11.カリフォルニアロスアンゼルス大 12.シカゴ大 13.ジョンホプキンス大 14.コーネル大 15.スイス工科大 16.ミシガン大 17.トロント大 18.コロンビア大 19.ペンシルバニア大 20.カーネギーメロン大 26.東京大 57.京都大 112.東京工大 130.大阪大 132.東北大

日本の現状―世界教育戦争に出遅れ気味

日本は微増止まりー各国の論文提出推移―(2000年から2009年)

米国32万から41万へ
中国3万から28万へ
英国8万から12万へ
ドイツ7万から11万へ
日本9万から10万へ
フランス6万から8万へ
カナダ3万から7万へ
イタリア3万から6万へ
スペイン2万から5万へ
インド1万から5万へ

アジア勢の存在感強まる PISA(学習到達度調査)のスコア(2009年)

読解力 1.上海 2.韓国 3.フィンランド 4.香港 5.シンガポール 6.カナダ 7.ニュージーランド 8.日本 9.オーストラリア 10.オランダ

数学的リテラシー 1.上海 2.シンガポール 3.香港 4.韓国 5.台湾 6.フィンランド 7.リヒテンシュタイン 8.スイス 9.日本 10.カナダ

科学的リテラシー 1.上海 2.フィンランド 3.香港 4.シンガポール 5.日本 6.韓国 7.ニュージーランド 8.カナダ 9.エストニア 10.オーストラリア

シンガポールにも抜かれた日本―ハーバード大学への留学生推移―(98年から2010年)

中国:カナダと並んで留学生トップ(180万人から550万人へ)
韓国:180万人から300万人へ
インド:100万人から230万人へ
日本:150万人から100万人へ
台湾:100万人から100万人へ
シンガポール:60万人から140万人へ

日本は教育への投資が少ないー教育機関への支出(対GDP比)

米国7.6 デンマーク7.1 韓国7.0 カナダ6.1 英国5.8 フィンランド5.6 オーストラリア5.2 日本4.9 ドイツ4.7 イタリア4.5