製薬、バイオ薬シフト

 武田薬品工業など製薬大手が新薬開発で、人間の免疫反応を生かすバイオ医薬品へのシフトを進めている。大手4社が臨床試験(治験)するバイオ薬は計25件。本格的に取り組み始めた4年前と比べて3倍に増え、開発中の薬に占める割合は2削弱に達した。欧米勢に比べてまだ出遅れているが、ここ数年の海外ベンチャー買収などを通じて取得した技術で巻き返しを図る姿勢が鮮明になってきた。
 化学合成薬より副作用少なく 
各社が開発を進めるバイオ薬の大部分は、異物を自然に排除する人間の免疫システムを活性化し、がん細胞など病気の原因を治療する「抗体医薬品」。人体が本来持つ仕祖みを生かすため、がん細胞などを直接攻撃する従来型の化学合成薬よりも副作用が少ないなどの利点があるとされる。 
武田は2014年度に日本でリンパ腫、欧米で潰瘍性大腸炎を治療するバイオ薬の承認を得ることを目指す。第一三共は肝細胞がん薬を患者に投与して効果を確かめる治験を世界で進行中。アステラス製薬はリウマチ薬を日本で申請した。
 日本の製薬大手のバイオ薬開発は11年3月末時点で20件。1年あまりで5件増え、ピッチを上げている。買収などを通じて開発期開か短縮されているのが一因だ。各国の保健当局が副作用の強い薬を承認しない傾向を強めており、バイオ薬の方が発売できる確率が高いという判断もある。
 武田のバイオ薬の抗がん剤は12年度の国内売上高目標が190億円。第一三共のがん関連薬は同50億円にとどまるが、今後、本格発売に向けた準備を進める。第一三共は29億円を投じ、14年度までに群馬県のバイオ医薬品工場を増強。武田も主力拠点にバイオ薬の生産施設を設けた。
 ■素材大手にノウハウ
 開発中のバイオ薬には多数の患者に投与して効果を見極める最終段階のもの池ミ、数年内に複数が売り出される可能性がある。早ければ20年ごろに売上高合計が500億円を超える見通し。
 欧米の製薬大手はバイオ薬が収益の柱となっている。調査会社のセジデム・ストラテジックデータによると、スイス・口シュグループの乳がん治療薬の11年売上高は55億ドル(4400億円)。米ファィザーの肺炎球菌ワクチンは41億ドル、米ジョンソン・エンド・ジョンソンなどのリウマチ薬は90億ドルに連する。
 日本では素材大手がバイオ関連の基礎技術に強い。富士フィルムや帝人は細胞を効率よく培養するための材料を開発しており、バイオ医薬品への応用を目指している。日本の製薬大手が欧米勢を追い上げるには、これらの技術を生かす協業なども必要になりそうだ。

2012.08.14