最近の企業動向

外資系・日系主要業種の最近の企業動向は?

日本企業の競争力とは  苦境脱出の道さぐる            一橋大 沼上 幹教授

多くの日本企業がグローバル競争の中で苦境に立たされている。しかし、この苦境から抜け出す処方箋について意見が収束しない。処方簾が多様なのは、今の日本企業と比較対照する準拠点が異なるからかもしれなぃ。
 たとえば、現場の丁寧な観察を通じた知見創出で日本的経営に関する議論をりードしてきた小池和男は、『高品質日本の起源』の中で、主として過去の日本企業を分析対象としな がら、今でも「発言する職場」が国際競争力のカギであると説く。小池は、日本の綿紡績業が既に1920~30年ごろに、ある程度高い品質の商品を出荷していたこと、その背後には品質向上に関して現場の知識をもつ労働者たちが積極的に発言する職場が形成されていたことを指摘する。この過去の日本の職場を一つのモデルとして想定しながら、今日の国際競争においても、ますます品質の高さとそれを支える発言する職場が重要になると指摘する。
 重要性ます職場
 また特に3次元CAD(コンピューターによる設計)の時代には、ぃままで平面図のみでは早期発見しにくかった問題を現場の熟練作業者が早めに気づきやすくなるので、発言する職場の重要性はますます高まると小池は主張する。
 畑村洋太郎・吉川良三の『勝つための経営』は多くの点で小池の主張と対立する。本書は主として韓国サムスン電子を比較対象に置いて、2000年代の環境変化に適応できたサムスンが成功し、適応に遅れた日本企業が低迷していると指摘する。
 2000年代に入ると、主としてアジアにある程度の購買力を持つボリュームゾーンが急増してくる。今では日本の人口の8倍程度にまで膨らんでいるボリュームゾーンにとって微妙な品質差は重要ではない。それ故この顧客層には、高度なものづくり能力を持たなくても3次元CADとCAM(コンピューターによる製造)を使ったデジタルものづくりで対処できる。たとえ日本企業の職場が作る製品の品質がいまでも高かったとしても、圧倒的な低コストを武器にして、上から下まで多様な市場ニーズに適合した商品ラインアップを迅速かつ適切に揃えるサムスンが、多くの市場で優位に立つことになる。この視点を取ると3次元CADに関する評価が小池とまったく逆になる。
 日本の企業システムをアングロ・アメリカンのそれと比較すると、また別の処方簾が出てくる。たとえば目本の産業政策の研究で有名なワシントン大学のマリー・アンチョルドルギーは、「日本経済の再設計」の中で、日本の資本主義を「共同体資本主義」と呼び、日本を共同体志向から、もう少し市場重視へとシフトさせることが重要だと主張する。
 「内向き」の傾向
共同体の自律性を優先する傾向は技術国産主義に顕著に現れる。たとえば、通信やコンピュータ、半導体など、たとえ輸入した方が効率的であったとしても、初期には国産化を目指し、今でも国産技術の延命に努力を重ねる。このような技術国産主義は、「競争において利用可能な最良の技術を、企業が利用する能力を損なってきた」と彼女は指摘する。つまり、国産技術や社内固有技術にこだわりすぎる日本企業は、市場の使い方や市場の設計に関するスキルを蓄積してこなかったので、市場を活用した戦略構築が苦手だ、ということである。
 さらにもう一歩進めて言えば、企業も国も内向きに思考し、社内部門間やグループ企業同士の「すりあわせ」による組織内・組織間シナジーを追求する傾向が高く、国境を越えた異質なプレーヤーが市場を通じて競争し、取引することで創発する経済全体のシナジー効果を視野に入れていない、ということになる。本書を読みながら、細かい点では心の中で反論を連発しつつも、しかし同時に、自分のもつ技術ナショナリズムという暗黙の価値観を再検討させられる部分があることを認めないわけにはいかなかった。

2012/05/22