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医療・IT 「脳」で革新 米が昨日全容解明へ国家プロジェクト  産業への応用 日本は後手

 アポロ計画などに匹敵する「米国の偉大なプロジェクト」になる」。オバマ米大統領は4月初め、脳の働きの全容解明を目指す大型計画「BRAINイニシアチブ」を発表した。成果は病気治療だけでなく、幅広い産業への応用が見込めると説明、経済成長と雇用創出の効果を強調した。
世界で競争進む
 脳の活動を秒単位で測定して画像にする技術は、ここ2~3年で急速に進んだ。例えば機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)などで、喜びやねたみの感情が湧いた時、脳のどの領域が活発に働くか把握できる。さらに精度を高め、商品開発や経営者の人心掌握などに生かせる可能性がある。
 脳波をもとに機器を操るBMI(ブレインーマシンーインターフェース)も実用段階に入った。脳波のデータをコンピューター処理し、意思通りに家電などを動かす実験が始まっている。
 人間の脳には約1000億個の脳神経細胞(二ユーロン)があり、約100兆ヵ所もの接続点を通じて複雑なネットワークを構成している。脳の情報処理の研究にビッグデータの技術も役立つ。脳波計測などの技術と合わせれば、BMIの応用範囲は広がり使い勝手もよくなるとの期待は高い。まったく新しい記録媒体やデータ処理法の開発も視野に入る。
 米国はこうしたタイミングに合わせ、BRAINイニシアチブを立ち上げた。BRAIN(脳)は「革新的ニューロ技術の進展による脳研究」の略称でもある。2014会計年度の政府予算は1億ドル(約98億円)。10年程度の長期計画で、民間からも政府と同程度の拠出を求め産官学連携で進める。総額は2000億円規模になる見通しだ。
 欧州連合(EU)も13年から10年計画で約12億ユーロ(約1500億円)を投じ、脳の情報処理のメカニズムを解明。IT(情報技術)の革新につなげる。イスラエルやシンガポール、韓国、中国などでも大型プロジェクトが進行中だ。
 オバマ大統領は「世界が競争を繰り広げている」 「新たな雇用を生み出す発見を中国、インド、ドイツではなく米国で起こしたい」と表明。手をこまぬいていては、医療やIT産業の競争力低下を招きかねないとの危機感をあらわにした。
 米国では過去に国立衛生研究所(NIH)が主導したヒトゲノム計画が遺伝情報を使った医療診断などの普及を促した。1ドルの投資が140ドルのリターンをもたらした」 (オバマ大統領)
 全米科学財団(NSF)が支援した検索技術の研究は米グーグルの基礎になった。国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が進めた通信技術の開発はインターネットに道を開いた。米政府はBRAINイニシアチブに、これらに匹敵する波及効果を期待する。
 「数年が勝負」
 米国の脳プロジェクトの源流は1990年開始の「脳の10年」に遡る。日本でもこれを手本に96年に脳科学研究計画を始めたが、数年で尻すぼみになった。08年に改めて10年計画の「脳科学研究戦略推進プログラム」がスタート、13年度分を含めこれまでに計約170億円を振り向けた。
 ただ「研究成果の戦略的な産業応用ができていない」とNTTデータ経営研究所(東京・千代田)の萩原一平マネジメントイノベーションセンター長は指摘する。同研究所は10年、日本神経科学学会と連携して産学の橋渡しをする応用脳科学コンソーシアムを結成。「脳科学は宝の山」との呼びかけに応じ、東芝や日産自動車、博報堂など30社以上が参加している。
 研究者の意識も変わり始めた。日本神経科学学会、日本精神神経学会、日本リ(ビリテーション医学会など19学会は12年に日本脳科学関連学会連合を発足。基盤技術開発から基礎研究、臨床や産業応用までを産官学で加速するための政策提言づくりなどを進めている。
 萩原センター長は日本が国際競争力を持てるかは「ここ数年が勝負」とみる。18年に終わる文部科学省の脳プログラム後の展開を含め、早急に戦略を練る必要がある。

2013/04/19